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パリところどころ Villa Savoye2023.03.07

パリから郊外へ電車で30分ほどのポワシーという町に、ル・コルビュジエが設計した傑作、サヴォア邸はあります。1930年頃にピエール・サヴォア夫妻が別荘として依頼したモダンな一軒家です。20世紀の住宅の最高作品の一つと云われており、フランスの歴史的建造物にも指定されているそう。


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ポワシーの駅を降り立ち、厳かな教会の横を通りながら緩やかな石畳の坂を登っていき鬱蒼とした雑木林を抜けると、程なくしてサヴォア邸が出現します。だだ広い芝の広場に悠然と立っているスクエアな白い建築物。ピロティを大胆に使うことにより、居住スペースが浮かんでいるような独特なデザインです。


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室内の螺旋階段などは、コルビュジエらしい曲線を多用した美しいフォルムが、やわらかい印象を作っています。また、水平連続窓は光をたっぷりと採り入れ、室内空間を広々と明るいものにしています。二階から外庭を覗くと、ちょうど見学ツアー御一行様がこちらを見上げていました。


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屋上には広々とした庭園があります。プライバシーが確保されており、のんびりと過ごしたくなるような贅沢な空間が広がっています。

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郊外の町の、のんびりとした雰囲気も含めて、パリ市内とはまた違ったフランスらしい趣に浸ることができます。一度ならず二度三度と訪れたくなるようなこの場所は、自邸を建てるならぜひ参考にしたいと思わせるものがあります。morimo



パリところどころ Galerie 542023.01.25

16区にはもうひとつ、以前ご紹介したコルビュジエ建築(ラ・ロッシュ/ジャンヌレ邸)の程近くにモダニズム建築家、ロベール・マレ・ステヴァンによる素晴らしい建築があります。元は1927年に彫刻家マルテル兄弟のために建てられたアトリエで、現在はエリック・トゥシャロームによるGalerie 54としてオフィスを兼ねて運営しており、建築関係者を中心に(アポイントを取って)見学できます。外観はモダンでアーティで、緑もたくさん茂っていて、美しさに一目でこころ惹かれます。なんとなく、20年以上前に南青山にあったイデーの雰囲気にも似ていて郷愁のようなものを感じました。



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重厚な鉄扉や表札も、オーセンティックな面持ちです。前日に予約の連絡を入れたのですが音沙汰なしだったので、コルビュジエ建築見学のついでに外観を眺めつつ、僅かな可能性を信じて呼び鈴を押してみると「10分くらいならいいよ」と快く迎え入れてくれました。



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中に入ると心地よい空間に、所狭しといろいろなものが並べられています。フレンチモダンの家具・照明や陶器、アブストラクトな彫刻やオブジェ、アフリカのフォークアート... エトセトラ、エトセトラ。常時一般公開している美術館やアートギャラリーとは違い、数々の名作が雑然と置いてあるのも、また一興です。2階のビューローや半地下のストックルームを見ることは叶いませんでしたが、吹き抜けを活かした建物の造作もまた美しいものでした。



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ピエール・ジャンヌレの巨大なテーブルや革張りの肘掛け椅子、大好きなジョルジュ・ジューヴの花瓶が無造作に置いてあったりして、エリック・トゥシャロームの膨大なコレクションに囲まれたこのワークスペースが羨ましくもありました。南仏にある野外公園「Friche de lʼEscalette(フリッシュ・ド・レスカレット)」にトゥシャロームが移築した、ジャン・プルーヴェのトロピカルハウスにも近いうちにぜひ訪れてみたいものです。morimo



パリところどころ La Maison La Roche=Jeanneret2022.11.08

今秋(2022年10月)発売の柚木沙弥郎さん第三弾リトグラフの制作のため5月のパリを訪れた際に、ル・コルビュジエの手がけた「ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸」を訪問したのでご紹介します。

16区のジャスマン駅から閑静な住宅街を通り抜けると、木々の生い茂った優雅な小径が現れます。その先には、1923-25年にかけてル・コルビュジエと彼の従兄弟ピエール・ジャンヌレによって設計された私邸。コルビュジエの兄で音楽家のアルベール・ジャンヌレ邸と、前衛アートコレクターのラウル・ラ・ロッシュ邸との2世帯住宅で、最初のピュリスム邸宅のひとつと云われています。


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平らな屋根やピロティ、白いファサードと緩やかに湾曲した壁面が、如何にもコルビュジエらしい美しいフレンチモダン建築の様相。シンプルで洗練された建物が、天気の良い閑静な住宅街に悠然と佇んでいます。


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建物の中を巡ると、其処彼処に美しいパースペクティヴが生み出され、内壁は彼らの理論に基づいた多色装飾が用いられ、コルビュジエの美意識が感じられます。数年前に初めて訪れた時は、彼のカラーチップ集を買って至極興奮したものです。


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建物の各所に続く、吹き抜けの明るい中央のホールと小ぢんまりした各部屋とのコントラスト、黒いアイアンでデザインを引き締めた窓枠、各所の照明や把手などの味わい深い造形、草臥れた表情が時の経過を感じさせる一人掛けのLC2、etc。何処をとっても絵になる空間です。

他にも市内や郊外にいくつか必見のコルビュジエ建築がありますが、それらはまた別の機会にご紹介できればと思います。morimo



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