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16区にはもうひとつ、以前ご紹介したコルビュジエ建築(ラ・ロッシュ/ジャンヌレ邸)の程近くにモダニズム建築家、ロベール・マレ・ステヴァンによる素晴らしい建築があります。元は1927年に彫刻家マルテル兄弟のために建てられたアトリエで、現在はエリック・トゥシャロームによるGalerie 54としてオフィスを兼ねて運営しており、建築関係者を中心に(アポイントを取って)見学できます。外観はモダンでアーティで、緑もたくさん茂っていて、美しさに一目でこころ惹かれます。なんとなく、20年以上前に南青山にあったイデーの雰囲気にも似ていて郷愁のようなものを感じました。 重厚な鉄扉や表札も、オーセンティックな面持ちです。前日に予約の連絡を入れたのですが音沙汰なしだったので、コルビュジエ建築見学のついでに外観を眺めつつ、僅かな可能性を信じて呼び鈴を押してみると「10分くらいならいいよ」と快く迎え入れてくれました。 中に入ると心地よい空間に、所狭しといろいろなものが並べられています。フレンチモダンの家具・照明や陶器、アブストラクトな彫刻やオブジェ、アフリカのフォークアート... エトセトラ、エトセトラ。常時一般公開している美術館やアートギャラリーとは違い、数々の名作が雑然と置いてあるのも、また一興です。2階のビューローや半地下のストックルームを見ることは叶いませんでしたが、吹き抜けを活かした建物の造作もまた美しいものでした。 ピエール・ジャンヌレの巨大なテーブルや革張りの肘掛け椅子、大好きなジョルジュ・ジューヴの花瓶が無造作に置いてあったりして、エリック・トゥシャロームの膨大なコレクションに囲まれたこのワークスペースが羨ましくもありました。南仏にある野外公園「Friche de lʼEscalette(フリッシュ・ド・レスカレット)」にトゥシャロームが移築した、ジャン・プルーヴェのトロピカルハウスにも近いうちにぜひ訪れてみたいものです。morimo