「緑」をテーマにお届けする、3回目の「Wall to Wall」。今回は、石川初さんの登場です。過日、「緑と暮らす、緑を楽しむ」をテーマに活動をスタートした、イデーグリーンプロジェクトの第一弾企画として、グリーンを切り口にユニークで魅力ある活動をされている方々にお話しをしていただくトークセミナーを開催致しました。その中で、石川さんには「街の庭、私の風景」と題してお話頂きました。GPSを使って地上に絵を描く地上絵師としてTVなどにも多数出演をしている石川さん。ふだんはランドスケープアーキテクトとしてご活躍中ですが、その自然や風景に対する視点は大変ユニークです。前半は、映画でもおなじみのアメリカの「フロントヤード」タイプの庭やガッツとセンスで景観を維持するイギリスの庭等の海外で見た非常に美しい風景のお話。けれども帰国して気付いたのは、パワー溢れる日本の庭"J-Garden"が日本の風景を形成していることだということです。

下町園芸空間に見る、日本の庭 "J-Garden"

海外から日本に戻ってきて、アメリカやイギリスと同様に個人のガーデニングが街の風景を作っている例として「これだ!」と思ったのが、いわゆる下町の園芸空間です。非常に濃密かつ、バラエティに富んだ地域性が見られます。

この写真は、造園関係者にしか判別できないと思いますが、ハマヒサカキという植物で、実は刈り込まれている木も、 立っている木も同じ植物です。これを見たときには「やられた!」と思いました(笑)。

次も再び月島の写真ですが、日本では公共の緑地に個人が介入しているケースがしばしばあります。左の写真では、ベ ンチのそばにどんどん鉢が置かれてしまったようです。「ベンチ、鉢、おばあさん」と、そこに公園が出現してしまっていますね。

一方で錦糸町の土手では、川沿いに南向きの連続した斜面がありました。これを住民が放っておくわけがありません。 そこには、個人ガーデン空間がずっと続いていました。

そんな個人ガーデン空間が、「面」的に集合している都営団地の例をご覧に入れたいと思います。都営団地は、公団より外部空間の管理が緩いことが多く、そこに個人が緑地を作っている例をしばしば観察することができます。これを「都営スタイル」と呼んでいるのですが、青山の都営団地は周辺の花屋で売っている植物がおしゃれなので、団地にもハーブが植えられていたりします。これが地域性を示しているとも言えますね。
訪ねて行った際に、住民の方に「何をしているんですか?」と質問したところ、「庭を復旧している」ということでした。どうやら工事で自分の庭が使えない間、どこかに移動してあった植物を持ってきていたようなんです。
この団地を、千葉大の園芸学部の学生が修論で調査をしました。その図をお見せすると、東京都による植栽は、緑の部分。残りは住民自身による庭です。ほとんどが住民のガーデニングによって、この広大なランドスケープが維持されているわけですね。

また、都市部に行くとヒートアイランドの影響もあるようで、
もともと観葉植物として部屋に置かれていたものが、家の外に置かれたまま根付いている場合があります。


  • この植物はこんなに小さな鉢の中で、
    どうやって根を張っているかというと…

  • 「水!!!」みたいな。

さて、都市で見かける植物と言えば、これを無視することはできません。

造花です。私たちはなぜ、造花にしてまで花を生活の一部に取り入れたいと思うのでしょうか。これは「ホンコンフラワー」と呼ばれる商店街によくある造花ですが、一時期これにはまりまして。そこで、バイトの学生を集めて「いろいろな場所を商店街にしてしまおう」というフィールドワークを行いました。

雨が降っていたので傘にホンコンフラワーを付けて表参道に出たのですが、やはり景観の破壊力がすごいですね。別のフィールドワークでは、風景を美しくするということは、それ自体が美しいだけではなく、「自分がどれだけ切実に関与しているか」なのではないかと、学生と議論をしました。ではどう関与するかという話になり、「種を蒔きましょう」ということに。そこで、ひまわりの種を買い占めて、表参道中に蒔いたことがあります。

数日後、様子を見に行くとちゃんと芽が出ているんですね。もちろん排除されたりもするので、結局200近くの種を蒔いて、開花したのは3個体。でも、いつのまにか支柱が付いているひまわりも出てきました。
これが思わず力を貸したくなる、植物の力ですね。


もっと違うやり方で、街の自然とコミットする方法はないかという話になり、「食べてみよう」ということになりました。赤坂から新橋まで、食べられそうな植物を辞典で調べながら歩きました。これは日比谷でシソが生えているのを見つけて収穫しているところです。

収穫後に「日比谷新橋膳」「臨海膳」を作って試食をしましたが、街の自然にアプローチする目をリニューアルするには、最高のフィールドワークでした。


  • ▲新橋膳 ・ヤブカラシの炒め物アカジソ添え  ・アズマネザサ新芽の煮物  ・タンポポの根のきんぴら  ・カンナの新芽・豚肉巻きハコベ添え  ・ガクアジサイの蕾とカタバミの天ぷら  ・イメジョオンのお浸し

  • ▲臨海膳 ・ドクダミの葉の天ぷら  ・ヨモギの天ぷら  ・タンポポの花の天ぷら  ・ドクダミの地下茎のきんぴら ・タンポポの葉のお浸し  ・ハマナシの実   ・シロザのお吸い物  ・タンポポの根のコーヒー

おわりに〜

視点を変えれば東京の街がもっと面白く見えてくる??ともすれば普段は見過ごしてしまう、そんな東京の緑の風景に 対する新しい見方をもたらしてくれるお話でした。いつもの見慣れた街並みも、少し角度を変えてとらえてみると、はっと気付くことが多々あります。「街を味見しよう!」とは言いませんが、下を見ながら歩いている通勤途中でも、周囲の風景を見わたす余裕を持てば、きっと新しい発見があるはず。個人のそんな気付きは、美しく過ごしやすい住宅環境を生み出す原動力になるのではないでしょうか。
イデーグリーンプロジェクトでは、今後も色々な方が参加できる、たくさんの企画を予定しておりますので、どうぞご期待下さい!!

Member Profile

石川 初

石川 初 地上絵師/登録ランドスケープ
アーキテクト(RLA)
関東学院建築学科非常勤講師、
千葉大学園芸学部非常勤講師
▼略 歴
1964年、京都生まれ
1987年、東京農業大学農学部造園学科卒業
1987年、鹿島建設株式会社入社
1991年、アメリカ、HOK社へ派遣研修
2000年、株式会社ランドスケープデザイン設計部
現在に至る
▼所属団体
日本造園学会、東京スリバチ学会、東京ピクニッククラブなど
▼書 籍
「ランドスケープ批評宣言」INAX出版,2002(共編著) 「ドボク・サミット」武蔵野美術大学出版局,2009(共著)など
http://fieldsmith.net/bslog/


IDEE GREEN PROJECTとは

イデーでは生活の探求をテーマに人々の暮らしがどうあるべきかを考え、それを家具や空間、食や音楽などを通じて提案し続けてきました。こだわりや愛着のあるモノに囲まれた空間は、毎日の生活を豊かにしてくれます。一方でかたちや趣味性としてのデザインともに最近ますます気になっているテーマに、自然とどう向き合って暮らしていくかということがあります。

特に身近な自然であるグリーンとの付き合い方は、イデーでもグリーンショップの運営や空間デザインを通じて提案をし続けてきましたが、このたびあらためて「緑と暮らす、緑を楽しむ」をテーマに『IDÉE GREEN PROJECT』をスタートしました。グリーンをテーマにする背景には、もちろん時代的な問題意識からのエコであるとか、サスティナビリティといった視点があり、それらは無視できないものですが、イデーとしてはあくまでも都会の暮らしのなかで個人が生活を楽しんだり、趣味性を追求したりすることの延長戦上で、このプロジェクトを進めていきたいと考えています。


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