第1回目の今回は、「音」がテーマ。 部屋に流れている音楽やその聴き方、音楽と空間デザインの類似性、そして、家の中に存在する音楽だけではない様々な"音と家のこと”をそれぞれの分野で活躍するイデースタッフ3人に語ってもらいました。まずは、それぞれの自分なりの音との付き合いかたから話してもらいます。

3者3様の音のある生活

寺島:
今日は、事前に”音と家”をテーマに自宅の写真を撮ってきてもらいました。あと、自分の部屋のテーマ音楽を選ぶとしたら?という宿題も出してみましたが。岡野君は空間デザイナーとして、自分の部屋もこだわりのインテリアなんですか?
岡野:
週末によく庭いじりをするんで、インテリアではなく、庭の写真を撮ってきました。賃貸マンションなんですけど、1階なので小さいですけど専有庭があって。隣がガソリンスタンドで3mくらいの壁があるんですけど、それが逆に功を奏して、カーテンも付けなくていいし、大通りがすぐそこなのにとても静か。更には、ガソリンスタンドの影響で10時くらいまでは明るいんです。
寺島:
音の無い静かな時間とか場所って都会では、あまりないから貴重ですよね。都会の喧噪が好きな人ももちろんいるとは思いますけど。
岡野:
僕は地方出身で、実家は竹林の中にあるような感じなんです。一見とても静かなんですけど、実はよく聞くと自然の中は、音で溢れています。都会の家の24時間換気のブーンという音と違ってそれはとても心地よい賑やかさです。その賑やかさは、やっぱり都会にはないので、今の家で過ごす夏の昼間は、庭を眺めながら好きな音楽を聴いてビールを飲んだりしています。その時のテーマ曲は、フリーテンポの曲。この庭はまだ未完成でこれから少しずつ充実させていければと思っています。出来れば、壁も白く塗って、FIORE BENCH(チークのベンチ)を置いたり。家の中で使っているものを外にも持ち出して使う内と外の境界がない部屋を目指しています。
松本:
私も音楽を聴くのはお休み日の昼間。テラスで金魚を飼っているので、お水を替えるときなどに音楽をかけます。聴くのはジェシー・ハリスというソングライターの曲。東京の慌しい生活の中で、家でゆっくり彼の曲を聴くとストレスを発散できるんですよ。強張った肩を少しずつ解いていってくれるというか。また、リビングの壁一面がCDラックになっているんですが、それはホームセンターで木を切ってもらって自作したものです。今はソファーが無いので、音楽を聴きながらゆっくりできるものを買おうと思っています。
寺島:
この壁面の写真は圧巻ですね。さすが、前職は某大手レコード販売店勤務の松本さん。僕は引っ越すときに膨大なCDを持っていくか悩んだのですが、結局 MP3データに変換して全部売ってしまいました。本当にすごく悩んだんですけど、モノに囲まれた部屋から一度脱却してみようかと思って。
松本:
古い人間なのかもしれないけれど、CDジャケットもインテリアの一つとしてポスターみたいな感覚で部屋の雰囲気を変えられるし、捨てられないんですよ。一人のアーティストでも時代が変われば曲も変わるし、そうするとジャケットも変わっていく。その時その時で歴史を感じられる。それをどうきれいに見せるのかというところからラックを作りました。
寺島:
僕もギターはさすがに捨てられなくて、こちらは、帽子掛けとしてインテリア化しています(笑)。空間をとらなくても、ものすごくたくさんの音楽を楽しむことができるようになった一方で、CDやレコードを並べることによって満たされるスタイルもある。グラフィックデザイナーであり、イデーレコードのジャケットや選曲を担当している森本さんは、やはり後者?
森本:
そうですね。僕の場合ほとんどアナログ・レコードなんですが、そのジャケットの顔つきとかデザインとか、ありますよね。家ではJBLのMODEL4312というスピーカーとオールドサンスイのアンプで聴いています。アンプはブラック・フェイスとアルミ削り出しのつまみが好きなんです。スピーカーケーブルはウェスタン・エレクトリックという会社の、これもヴィンテージもの。周波数特性がフラットで素直で良い音がするし、ライトグリーンと白の2TONEが北欧モノのインテリアなどとも相性が良くて好きです。よく聴くのは、例えばブッカー・Tの「Jamaica Song」のような、グルーヴ感もあるけれどアコースティックで熱すぎないフォーキーなソウルとかジャズとか。音楽以外でもそんな感覚の家具とか空間が好きです。音楽を聴く時の家具はアンティークのドムスチェアとアーコールの丸いコーヒーテーブル…そんな感じです。

音楽と空間、「気持ち良い」と思う感覚は同じ

寺島:
気持ちのいい音楽と空間には似たところがあると思います。何かデザインをするときは、絵画で言えば“タッチ”のような部分をいかに出せるか…依頼者がどういうタッチを求めているかという、図面に現れない部分を叶えていきたい。白い壁で床はフローリングでという技術的なことは最低条件で、ある空間に入ったときに「気持ちいい、この空間いいな」という感じや気配。
森本:
僕もすごくそう思う。それは表面的なものではないですよね。音楽をつくるときもコードの響きやアレンジの雰囲気を大事にしますが、空間でも置く家具の組み合わせなのか、素材の組み合わせなのか、または光の入れ方なのか、そういったものを合わせたムードみたいなものが、居心地のいい空間と時間を生む気がします。キャロル・キングのやっていた「The City」の「Now That Everything's Been Said」というアルバムの都会と郊外の中間みたいな空気感は、僕がイデーで出したい感覚と似ている。たくさん詰め込みすぎないでラフで余白のある、抜きの美学のような。
岡野:
雰囲気やムードと言えば、住み手の気分で部屋に求めることは変わっていくものだと思います。僕は楽しいときは、そのモチベーションをもっと高められる音楽を聴きますし、泣きたいときはそれに合う音楽でその感情を高める。朝も昼も夜も部屋の雰囲気は違うし、そのときの気分でどこに居たいとか、どんな音楽を聴きたいとか、自分の求めるものも違う。そんな住み手の正直な気持ちに応えてくれる場所を見つけられることで人はリラックスできるんだと思います。
寺島:
そういう意味では、音楽や音は、空間を一変させるものでもありますね。建物や内装がいくら格好いい店舗でも、 BGMが安易な選曲だと台無し。USEN放送にIDEE Records Channel(D/H-46)というものがありますが、もしかするとこれを流すだけで我が家がイデーショップに早変わりするかもしれません(笑)。空間を変える手段は、壁の色や床の素材を変えるということだけではありませんね。例えば、イデーショップはインハウスの空間デザイナーがデザインするわけですが、そこで流れる音楽は、イデーレコードのスタッフが選曲するわけで、その相乗効果でショップの雰囲気は良くもなるし悪くもなると思います。家に関してもそうですね。もちろん家をデザインするときにそこで聴く音楽を限定するというのはナンセンスですが、流れる音楽を想定してアイデアを練るという手法もあるはずですよね。

おわりに~

自分の住居を造ったり探したりとすることは動物の本能。子供を産んで育てるのに安全な住環境を探す本能があるはずなんですが、最近の日本では「こういう家がいい」という一般論の正解みたいなものが強くなってしまったように思います。今回の座談会では、空間を変化させるツールとしての音の話などが出ましたが、空間も、好きな音楽を楽しむように100人100様のスタイルがあっても良いのではないでしょうか。今後も「Wall to Wall」では、家づくりに関わる色々なファクターについて引き続き楽しく思索していきます。

Member Profile

森本 直樹

1971年生
TV番組サウンドトラック選曲を経て、ポニーキャニオンにて音楽活動。その後、1998年イデー入社。(同時に米レコードレーベルにて音楽活動)
▼ 担当業務
アートディレクター/グラフィックデザイナー
イデーレコーズ

松本 陽子

1976年生
タワーレコードにて店舗内装サイン、ディスプレイ担当を経て、デフスターレコーズのプロモーションデスク勤務。その後、2005年イデー入社。
▼ 担当業務
デリエ イデー マネージャー

岡野 真弥

1978年生
2002年イデー入社。イデーワークステーション、コーディネート事業部等を経て、法人営業部デザインチーム在籍。
▼ 担当業務
空間デザイナー

寺島 敏貴

1974年生
設計事務所を経て、2001年イデー入社。2004年退社後、デベロッパー勤務を経て、2007年イデーへ復帰。現在法人営業部在籍。
▼ 担当業務
空間ディレクター/イデーハウスプロジェクト


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